米国は2026年6月22日、耐量子暗号(PQC)への移行を求める大統領令14412に署名した。対象は高価値資産(HVAs)、FIPS 199で「高」評価される高影響度システム、連邦政府契約業者で、鍵確立(暗号化)は2030年12月31日まで、デジタル署名(認証)は2031年12月31日までに移行を完了させることが求められている。各機関は7月中にPQC移行リーダーを指名し、9月までに移行計画をOMBへ提出する必要がある。
なぜ今なのか
「今使われている暗号方式の一部は、将来十分に強力な量子コンピューターが実用化されれば解読される可能性がある」というのは今に始まった話ではない。NISTが耐量子暗号の標準規格(ML-KEMなど)を制定してから数年が経ち、規格が固まった段階から実際の移行義務化へと話が進むのは自然な流れだ。「今は解読できなくても、暗号化した通信を今のうちに盗んで保存しておき、将来の量子コンピューターで解読する」といった、いわゆるharvest-now-decrypt-laterのリスクを考えれば、機密性の高いデータほど移行を先延ばしにするコストは大きい。
Cloudflareの立ち位置
Cloudflareは今回の大統領令を「重要なマイルストーン」と評価し、自社のネットワークソフトウェアとクラウドサービスの大半について、追加費用なしにPQC対応を完了済みだとしている。さらに自社目標として2029年までの完全な耐量子セキュリティ達成を掲げており、政府の期限より前倒しの姿勢を打ち出している格好だ。
実務者へのヒント
2030年・2031年という期限は一見遠く見えるが、大規模システムの暗号方式移行には長い準備期間が要る。対象が政府機関や契約業者に限られるとはいえ、暗号ライブラリやTLS実装のPQC対応状況は、対象外の民間企業にとっても数年内には無視できない話題になっていくはずだ。詳細はCloudflare Blogの記事(https://blog.cloudflare.com/post-quantum-eo-2026/)で読める。