AWS Summit New Yorkの会場で披露された「AWS Context」は、社内に散らばるデータの「つながり」を自動でグラフ化するサービスだ。テーブル同士がどう結びついているか、列が何を意味しているか、業務ルールは何かといった情報を推論し、AIエージェントが実行時に参照できる形で保持する。

RAGとの違い

これまでAIエージェントに社内データを扱わせる主流の方法は、文書やレコードをベクトル化して検索する「RAG(検索拡張生成)」だった。RAGは似た内容の文章を引っ張ってくるのは得意だが、「このテーブルとあのテーブルが顧客IDで結びついている」といった構造的な関係を教えるのは不得手だ。AWS Contextは、この構造的な関係性そのものをグラフとして持たせる点で、RAGを置き換えるというより補完するアプローチに近い。

昇格プロセスという安全弁

推論された関係は自動的に信頼されるわけではなく、データスチュワードがコンソール上でレビューし、本番用に「昇格」させる工程を経る。さらにエージェントが実際にグラフを使うたびに、どの経路が正しい答えにつながったかを学習していく継続学習の仕組みも備える。個人向けのナレッジグラフ機能を持つAmazon Quickと基盤技術を共有しているとされ、個人の作業支援で磨いた技術を組織全体に広げた格好だ。

気になる点

自動生成された関係性を人間が承認する体制は堅実だが、裏を返せばデータ量が増えるほどレビューの負荷も増える。この「昇格」の運用がどれだけ現実的にスケールするかは、実際に大規模組織で使われてみないと分からない部分だろう。詳細はAWS News Blogの発表記事(https://aws.amazon.com/blogs/machine-learning/context-intelligence-for-your-data-and-ai-agents-at-scale/)に載っている。